雇用調整助成金 従業員への支給は源泉税の対象です
2009年 04月 09日 - 03:25 by 桂 一朗
昨年来の不景気により、一定期間、休業せねばならず、結果、従業員へ「休業手当」を支払う必要が生じることとなる。ただ、収入が減っている事業者にとって、この休業手当は非常な負担感が生じる。つまり従業員への解雇の誘惑にかられる瞬間である。しかし、それでは失業者が増えるばかりであるため、このような事業者へ雇用の安定を促すために雇用調整助成金または中小企業緊急雇用安定助成金が支給されることになっている。
さて、この雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)を助成してもらった事業者は、その助成金を原資として休業手当を払うこととなるのだが、はたして、その休業手当は、源泉所得税の対象なのか?と言う疑問が生じる。なぜなら、失業した結果支給される「失業手当」は所得税を課税されないことになっているのだが、解雇されたかされないかで課税の区別があるのだろうかということだ。
結論的には、雇用調整助成金の支給を受けている事業者が、休業手当を支給した場合、その支給額は源泉所得税の対象となる。
失業手当(求職者給付:基本手当)がなぜ所得税の課税対象ではないのかといえば、雇用保険法第12条に
雇用保険法第十二条 租税その他の公課は、失業等給付として支給を受けた金銭を標準として課することができない。
と規定され、「失業等給付」は課税されないこととなっている。では「失業等給付」は何かといえば、雇用保険法第10条に
雇用保険法第十条 失業等給付は、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付及び雇用継続給付とする。
2 求職者給付は、次のとおりとする。
一 基本手当
二 技能習得手当
三 寄宿手当
四 傷病手当
3 前項の規定にかかわらず、第三十七条の二第一項に規定する高年齢継続被保険者に係る求職者給付は、高年齢求職者給付金とし、第三十八条第一項に規定する短期雇用特例被保険者に係る求職者給付は、特例一時金とし、第四十三条第一項に規定する日雇労働被保険者に係る求職者給付は、日雇労働求職者給付金とする。
4 就職促進給付は、次のとおりとする。
一 就業促進手当
二 移転費
三 広域求職活動費
5 教育訓練給付は、教育訓練給付金とする。
6 雇用継続給付は、次のとおりとする。
一 高年齢雇用継続基本給付金及び高年齢再就職給付金(第六節第一款において「高年齢雇用継続給付」という。)
二 育児休業基本給付金及び育児休業者職場復帰給付金(第六節第二款において「育児休業給付」という。)
三 介護休業給付金
となっていて、雇用調整助成金または中小企業緊急雇用安定助成金の根拠である、雇用保険法第62条の雇用安定事業はその対象とはなっていない。つまり、課税であるということになる。
雇用保険法第六十二条 政府は、被保険者、被保険者であつた者及び被保険者になろうとする者(以下この章において「被保険者等」という。)に関し、失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大その他雇用の安定を図るため、雇用安定事業として、次の事業を行うことができる。
一 景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた場合において、労働者を休業させる事業主その他労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講ずる事業主に対して、必要な助成及び援助を行うこと。
~引用者以下省略~
雇用保険法施行規則第百二条の二 法第六十二条第一項第一号 に掲げる事業として、雇用調整助成金を支給するものとする。
具体的な内容は、雇用保険法施行規則第102条の3に定められています。引用はしませんが、興味のある方はご覧下さい。
なお、雇用調整助成金は、法人税では益金となり、支給した休業手当は賃金(労働基準法第26条、同第11条)なのだから損金で、プラスマイナスゼロである。また、消費税は課税売上の対象とはならない。まぁ当然だよね。
結局何が言いたかったのかと言えば、給与計算の際に気をつけようねと言うことですw