生前贈与は、要するに贈与のこと

2007年 08月 16日 - 21:38 by 桂 一朗

我々の業界では、よく「生前贈与」という言葉が使われる。しかし、民法上、生前贈与などという言葉は、どこにも存在しない。


民法において、贈与は第549条に規定されている。

贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
特殊な贈与として、負担付贈与(民553)や死因贈与(民554)などがあるが、すくなくとも「生前贈与」という文言は民法上出てこない。


ちなみに、「法律用語辞典」782頁(有斐閣1998/6/30)の「生前贈与」の項目は次のように解説されている。

贈与者が生きている間に効力が生ずる贈与。通常の贈与はこれに当たる。死因贈与に対する概念。法制史的には、被相続人が所領や財産を生前に相続人に伝える行為を意味していた。
これを読む限り、生前贈与は、贈与の事、しかし、生きている間にしか贈与を行うことはできないのだから、生前であるのは当たり前のことなんですよね。


一般的に、「生前」という言葉は、生きている間、のことを意味しているが、生きている間ということは、死亡を前提として考えているわけで、この「生前」という言葉の使い方が、相続を前提として、相続が起きる前(死亡する前)の贈与のことを、あえて生前贈与と言った方がわかりやすいから、よく使われるようになったのだろう。


ともかく、「生前贈与」という言葉を、GoogleやYahoo!で検索すると、これでもかというほど、相続税対策をうたったWebSiteがHitしてくる。なぜ、「生前贈与」が相続税対策になるのかは、別の機会にしたい。おおよそ、現状では、「生前贈与」という言葉が、税理士が営業トークに使う言葉として定着しているのは間違いがない。要するに、税務用語である。


我々税理士が、本来、贈与とだけ言えばよいのに、あえて生前贈与という言葉を、営業トークに使ってしまうのは、生前という言葉が、"死んでしまったらもう遅いですよ"という、ある種の切迫感を醸し出す、よい言葉だからかもしれない。"さぁさぁ、親族の皆様のために、今、贈与をしましょう..."というニュアンスを伝えるには、良いのだろう。


正直、「生前贈与」の初出がどの文献なのかは気になるなぁ。調べる気力はないけど(汗。



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